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気になる裁判例

「性別の取扱いを変更した後に生まれた子からの認知請求(令和6年6月21日最高裁第二小法廷判決)」・・弁護士・吉川 愛


 性同一性障害者である男性が、性別の変更の審判を受ける前に冷凍保存した精子により生殖補助医療を利用して同人の同意のもと生まれた子からの認知請求について、嫡出でない子は、生物学的な女性に自己の精子で当該子を懐胎させた者に対し、その者の法的性別にかかわらず、認知を求めることができるという最高裁の判断がなされました。

 性同一障害者の性別の取扱いの特例3条には、@20歳以上であることA現に婚姻をしていないことB現に子がいないことを要件に性別の取扱いの変更を認めることが規定されています(なお、従前は要件として生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあることが規定されていましたが、最高裁判例により令和2年に違憲無効とされ撤廃)。

 一方、民法787条には、子ほか対象者は認知の訴えを提起することができると定められています。特例ができる前は、法的性別も生物学上も男性であることが当然の前提となっているものでした。原審は、子が出生時に男性である場合に限りその者に対して認知請求権を行使する地位を取得することができるのであるから、出生時に法的性別が男性から女性に変更されていた者に対して認知を求めることができないと判断し、本件において認知請求を認めませんでした。最高裁は時代の背景を分析した上、生殖医療に関する問題点については別規制に委ねることを前提に、法的性別が女性である父親に対して子からの認知請求を認める判断を行いました。


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