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「給与ファクタリング」の貸金該当性(令和5年2月20日最高裁第三小法廷判決)・・弁護士・吉川 愛


 本件は、貸金業の登録をしていない業者が、従業員(労働者)から使用者に対する給与債権について、形式的には債権譲渡を受けて対価を支払っていたスキーム(一般的に給与ファクタリングと言われています)が、実質は貸金業法の「出資の受け入れ」、預かり金及び金利当の取締りに関する法律5条3項にいう「貸付け」に当たると評価され、無許可で貸金業を営んだことによる刑事罰を受けた事案です。最高裁まで争われ、終局的な判断がなされました。給与債権は、労働基準法24条1項の趣旨から、債権譲渡がなされたとしても従業員に対して直接支払うことが求められているものであることから、債権譲渡の形式をとっても実際は債権を買い戻させるなどにより、従業員から資金を回収するしか方法がないこと、その他の事情を考慮して実質は貸金であるという判断がされました。
 一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスであり、債権譲渡契約として有効です。資金調達の手段として用いられており、これ自体が問題となるものではありません。しかし、ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当すると評価され、無許可で行うと刑事罰を受けることがあります。


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