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「会計限定監査役の任務についての判例」(最高裁令和3年7月19日)・・弁護士・伊藤祐介

 株式会社の監査役の職務は,原則として取締役(ないし会計参与)の職務の執行を監査すること(会社法(以下「法」といいます。)第381条1項)ですが,一般的には会社の業務一般を監査する必要があると解されています。
 しかし,非公開会社のうち,定款で監査役の監査の範囲を会計に関する事項に限定する定めが設けられている会社は,法第381条ないし第386条の規定は適用されず(法第389条7項),監査役の職務の範囲は会計に関する事項に限定されます。
 本件判例は,監査役の権限が会計事項の監査に限定されていた会社で,会社の従業員が10年以上に渡って会社資金を横領しており,その間,従業員が偽造した銀行の口座残高証明書をもって会社の預金残高の確認がされていたところ,監査役がかかる偽造に気付かなかったことに対して,損害賠償請求がされた事案です。
 最高裁は,「監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳簿の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。」と判示しています。
 これまで法令上は,会計限定監査役に関する監査手続の明文規定は存在していませんでした。このような中で,会計限定監査役の監査とは何を行うべきかについて一定の判断が最高裁で示されたといえます。


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