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「会社の支払った養老保険掛け金の必要経費性」・・・弁護士・花田行央

 法人が保険料を支払った養老保険契約(被保険者が保険期間内に死亡した場合には死亡保険金が支払われ,保険期間満了まで生存した場合には満了保険金が支払われる保険契約のこと)に係る満期保険金を当該法人の代表者が受け取った場合において,上記満期保険金に係る当該代表者の一時所得の金額の計算上,上記保険料のうち当該法人における保険料として損金経理がされた部分が所得税法34条2項にいう「その収入を得るために支出した金額」に当たらないとされた事例(最高裁判所第1小法廷判決平成24年1月16日/平成23年(行ヒ)第104号、平成23年(行ヒ)第105号)。

 法人が生命保険会社との間で,被保険者を代表者の子供とし,死亡保険金の受取人を法人,満期保険金の受取人を法人代表者とする保険契約を締結しました。法人は,本件契約に基づき保険料を支払いましたが,その内2分の1の部分については,役員報酬として損金処理し,その余の部分を法人保険料として損金処理していました。契約満期日に,被保険者が生存していたため,法人代表者は,満期保険金を受領し,法人が支払った保険料全額を必要経費として申告したところ,その必要経費性が争点となった事案です。

 本判例は,所得税法が,個人の収入のうちその者の担税力を増加させる利得に当る部分を所得としているところから,同法34条2項において必要経費として認められる金額は,その利得を得た者が支出したと認められる金額に限られると解釈しています。その上で,養老保険の満期保険金の原資は,掛け金であることから,法人保険料として処理された部分については,代表者が負担していない以上,これについては,必要経費性が認められないと判断し,更に代表者に対する過少申告加算税は相当と判断しています。

 上記必要経費に関する判断は,法令解釈として妥当なものと思われますが,所得税法通達34−4本分の文言が曖昧であることや,全額の必要経費性を認める市販解説書が存在したことからすれば,過少申告加算税まで課すことは納税者に余りに酷であったと思われます。

※ なお,所得税法上,一時所得は,必要経費ではなく,「その収入を得るために支出した金額」を控除すると規定され
 ていますが,紙幅の関係上,必要経費として説明しています。


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