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「債権差押対象の特定」・・・弁護士・高井 陽子
銀行の全店を対象にして、その中で差押対象預金の残高が一番多い店舗の預金を差し押さえるという本件申立てが、差押債権の特定に欠けるものではないと判断された事例(東京高裁平成23年10月26日)
本件は、抗告人が、相手方に対し抗告人への金銭支払いを命じた判決に基づく強制執行として、各第三債務者(本件では、銀行)の「複数の店舗に預金債権があるときは、預金債権額合計の最も大きな店舗の預金債権を対象とする」等と差押債権を表示して、相手方が各第三債務者に対して有する預金債権の差し押さえを求めた事案です。
債権の差押えの申立においては、どのような債権を差し押さえるか特定をして申し立てる必要がありますが、かかる特定は、債権差押命令の送達を受けた第三債務者が、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が、上記送達の時点で生じることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならない、と解されています。
そこで、本件のような差押えの申立は、差押債権の特定を欠き、不適法となるのではないかが問題となりました。
本件判決では、本件申立は、預金債権額合計の最も大きな店舗が決まりさえすれば、その後の処理は第三債務者の複数の店舗のうちの一つをその名称により個別具体的に特定して表示した場合と同様であり、第三債務者に特段の労力及び時間を費やさせるものではないこと、債権者としては、店舗を特定することができないまま債権差押命令の申立をせざるを得ない場合があること、などを理由に、本件申立を認めて差押命令を発しました。
かかる判例は、今後、債権者が勝訴判決に基づく強制執行を行う際に、債権者の負担を軽減すると共に、不誠実な債務者を利することのないよう、実務に配慮した先例として、意義を持つものと考えられます。
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