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気になる裁判例

内縁の妻に対する窃盗・・・ 弁護士・上田 裕介

 本年8月30日、最高裁判所第二小法廷において、刑法第244条第1項は、「内縁の配偶者に適用又は類推適用されることはないと解するのが相当である」との判断が下されました。

 刑法第244条第1項は、「配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪(窃盗)、第235条の2の罪(不動産侵奪)又はこれらの罪の未遂罪を犯したものは、その刑を免除する。」と規定するものです。
例えば、配偶者間での窃盗については刑を免除するということです。

 刑法第244条第1項規定の「配偶者」には原則として婚姻届を提出した正規の配偶者が含まれますが、婚姻届を提出していないが内縁関係にある所謂内縁の配偶者が含まれるかについては、これまで、最高裁判所の判断が示されていませんでした。
 この点について、最高裁判所は、同条同項により「免除を受ける者の範囲は明確に定める必要がある」として、内縁関係にある者には刑法第244条第1項の適用は認められないとしたのです。

 一般的には、同条同項が刑の免除を認める根拠について、法律は家庭に立ち入るべからずという政策的なものと捉えられています。
 法律は家庭に立ち入るべからずという考え方を貫けば、正規の配偶者と内縁の配偶者とで区別する理由はあまりないようにも思えますが、右の最高裁判所の判断は、刑の必要的免除という大きな効果をもたらす同条同項について、明確性という要素をより優先的に考慮に入れたものと考えられます。


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