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気になる裁判例

                                       敷金・保証金の返還・・・ 弁護士・藤川 綱之

 建物賃貸借契約に於いて、賃貸人が、賃借人に対し、自然損耗及び通常の使用による損耗に関する原状回復義務まで負担させる旨の特約の有効性につき、消費者契約法10条により無効である旨の判決が為されました(大阪高判平16・12・17、判時1894・18)。
 また、同種の事案に於いて、賃貸人が、賃借人から差し入れられた保証金の一部につき、契約終了時に返還しない旨の特約の有効性につき、やはり消費者契約法10条により無効である旨の判決が為されました(神戸地判 平17・7・14、判時1901・87)。

 この点、敷金保証金の返還を巡るトラブルが多発していたことから、国土交通省は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を提示しているところ、同ガイドラインに於いて、「原状回復」とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意、過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義され、その範囲に於いて賃借人の費用負担とされています。

 そして、上記二つの裁判例も、裁判所の判断が同ガイドラインに沿った形で定着しつつあることを示すものと思われます。表現の差こそあれ、賃貸人側に一方的に有利な特約もまだ少なからず存在していると思われますが、同ガイドラインに沿った形で敷金保証金の返還を求めていくことは十分に可能といえます。
 ただ、消費者契約法は個人消費者が対象であるため、法人の事務所賃貸等の場合は、別途の考慮が必要でしょう。


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