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気になる裁判例

不動産の不法占有 ・・・・・・・・・・・・・ 弁護士・河井匡秀

 抵当権者による不動産の不法占有者に対する明け渡し請求の可否

 不動産を不法占有している者がいる場合、抵当権者が不法占有者に対して明け渡し請求ができるかどうかについて、平成3年の最高裁判決は、抵当権は不動産の競売価格から優先的に支払いを受ける権利にすぎない、不法占有者は競売の落札者が裁判所の引渡命令により明け渡しを求めればいい等の理由により、これを認めませんでした。

 しかし、バブル経済の崩壊後、不動産の不法占有による競売妨害が多発し、不良債権の回収困難が社会問題にもなり、平成3年の最高裁判決には強い批判が寄せられていました。

 そこで、平成11年11月24日の最高裁大法廷判決は、平成3年の最高裁判決を変更し、競売手続の進行が害され、適正な価格よりも売却価格が下落するおそれがある場合には、抵当権者が不動産の不法占有者に対して明け渡し請求することを認めました。

 この判決は、抵当権者が競売妨害、不法占有等を直接排除し、迅速適正に債権回収をすることに道を開いたものであり、非常に重要な意義を持っています。

 今後、抵当権侵害を理由とする明け渡し請求は競売前でも認められるか否か、正当な不動産の賃借人の権利保障とのバランスをどのように図るか、という点が課題であり、更なる判例の集積が望まれます。


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