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気になる裁判例

損害賠償請求権の消滅時効 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 弁護士・田原 緑

 民法724条にいう被害者が損害を知った時の意義

 交通事故などに遭い、加害者に対して損害賠償請求する場合、民法724条によれば、加害者及び損害を知った時から3年以内に行わないと時効により権利が消滅してしまいます。

 この点、被害者が損害を知った時といえるのはいつかという点について、1.被害者による現実の認識が必要とする説、2.現実に認識していなくても被害者と同様の立場にある一般人ならば認識するであろうという事情があればよいとする説等が対立し、裁判例も判断が分かれていました。

 今回、最高裁平成14年1月29日判決は、被害者が、加害者の姓、職業、容貌を知っていたが、氏名、住所を知ることが困難であったという事案において、加害者の氏名、住所を現実に確認した時をもって加害者を知ったときというべきである旨(2.説)判示しました。

 1.説だと、被害者は、自己に対する不法行為が存在する可能性があることを知った時点で、自己の権利を消滅させないために損害の発生の有無等を調査せねばならなくなりますが、これは被害者にとって酷ですし、本条の趣旨が、損害の発生を現実に認識しながら3年間も放置した場合に加害者の法的地位の安定を図る点にあることにかんがみれば、2.説をとることは合理的といえます。また、そもそも2.説の方が、文理に忠実です。

 この判例は、これまで学説及び裁判例が対立していた点について、最高裁として初めて明確な判断をしたものであり、その点で重要な意味を持っています。


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