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「限定承認」・・・ 弁護士・吉川 愛

 疎遠となっていた父が死亡しました。相続人は私と弟の二人です。父は相続により土地建物を保有しているのですが、負債がどれくらいあったのかが分かりません。特に財産が欲しいということもないので、相続放棄を考えています。

 不動産についてある程度の価値が見込まれたり、結果として管理をしなければならない状況となることが考えられる場合には、相続の限定承認という手続きも検討することができます。相続の限定承認とは、相続によって得た限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済することという条件付きで相続をするというものです。今回のようにお父様の負債が不明な場合、仮に不動産の価格よりも負債が多くなったとしても、単純に相続財産の範囲で支払をすればよく、また、不動産の価格の方が弁済金額を上回る場合には、兄弟で残余財産について遺産分割協議を行い、これを取得することができます。 限定承認手続きは、相続放棄した相続人以外、全員で行う必要があるため、ご兄弟揃って行う必要があります。また、相続人が二人いる場合には、どちらかが相続財産管理人とならなければなりませんので、これもご兄弟で話をしておく必要があります。不動産以外にほかに財産や負債があるかないかについては、可能な限りで調査し、限定承認の申立ての際に財産一覧表を作成する必要があります。ご自宅の資料などの調査の他に、金融機関に対しては信用情報の調査などを相続人として行うこともできるので、これらはしておく方が良いでしょう。
 限定承認の申立てが受理された後は、選任された相続財産管理人が相続人の法定代理人として財産の精算を行います。また、限定承認がなされ、相続財産が選任された後は、選任から10日以内に、官報に公告すると共に、判明している債権者には一定期間内にその請求の申し出をすべき旨を催告しなければなりません。不動産については、競売手続きを取ることが原則とはなりますが、競売手続は通常の任意売却よりも金額が下がってしまうことが通常です。ですので、既に分かっている相続債権者が同意すれば任意に売却をすることも可能です。負債の額によっては、売却価格から諸費用を引いて、債権額に応じて按分して支払うことで終了することになりますが、残余財産がある場合には、遺産分割協議を行い、兄弟で分割することとなります。
 債権届出期間後に相続債権者の申し出があった場合も、清算の義務はありますが、相続人の財産と一体となってしまった場合には支払い義務はなくなると言われています。ですので、清算手続後に相続債権者が名乗りを上げてきても、既に相続人の財産と一体となってしまっている場合には支払い義務は無くなる可能性は高いです。しかし、念のためどういった清算手続きを取り、どういった遺産分割をしたかについてはしっかり残しておく必要があります。 また、限定承認の場合には準確定申告などの手続きや不動産の処理にあたっての税務上の注意点もありますので、税理士にも相談することをお勧めします。




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