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「離婚に伴う財産分与の割合」・・・ 弁護士・吉川 愛

 現在夫との離婚を考えています。私と夫は共働きで、収入もほぼ同じです。しかし、夫は家の家事・育児などは何もせず、私が仕事と家庭を両立させて家計を維持してきました。財産分与は通常二分の一、と聞いていますが、このような場合でも私は二分の一しかもらえない、というのは不平等に思えます。家事をした分、私の方に多く財産を分与してもらうことはできないでしょうか。私には、別居をしている夫がいます。私は、夫から度重なる暴力を受けていたため、夫が不在の間に家を出ました。ようやく私の生活が落ち着いてきたところ、知人から、夫がどこからか私の居場所を突き止め、私に会いに行く等と言っている話を聞きました。私は、夫が私の家まで来てしまうのかと思うと気が気ではありません。
 今後は離婚をしたいと考えておりますが、まず先に今の生活を安定させるべく、夫への恐怖から解放してほしいと思っています。

 財産分与とは、夫婦が離婚する際に、夫婦で培った財産を分けることを言います。お話合いで解決するのであれば当事者の合意で内容を決められるのはもちろんですが、双方が合意に至らない場合、家庭裁判所の審判によって強制的に財産分与がなされることとなります。この場合、裁判所によって財産の形成にどれくらいの貢献をしたかを寄与度という言葉で判断されることとなるのが原則です。財産分与の判断については、法律の規定はなく、裁判所が裁量によって判断します。
 昭和の時代の審判では、専業主婦や主に家事をやり、夫より少ない収入の妻が離婚する場合、財産形成の寄与の割合を少なく判断されているものも散見されています。しかし、現在では、家事労働に対する評価の見方が大きく変化しており、妻が家庭に入っている、又は主に家計を支えているのが夫である場合(逆のケースも当然あり得ます)の、寄与度は原則として2分の1、と判断されることがかなり多くなっています。
 例外としては、通常想定し得ない高額な財産を形成している場合(例えば220億の資産を婚姻後形成した場合)や、共有財産の範囲について、裁判所が分与を希望する側に有利な判断をしている場合(会社の財産を実質夫の財産と認定しているような場合)など、通常に二分の一にすることが結論として著しくバランスを欠くような場合に、寄与度の割合が変更されているように思われます。
 ご相談のケースでは、相談者様と夫の収入がほぼ同じ、ということを前提にすると、いくら家事労働を相談者様が全てやっていたからと言って、寄与度二分の一、という裁判所の今の考え方を大きく変更させるのは難しいようにも思えます。しかし、審判例の中には、夫婦共働き(双方自営業者)で、毎月一定の金額を共有財産、残りの部分は個別の特有財産とするという合意が前提となっている事案で、一定期間妻の方が家事・育児によって仕事を休まざるを得ない状況となったという事例の財産分与において、妻が仕事のできない期間、特有財産を形成することができなかったにも関わらず共有財産の割合を二分の一とするのは不平等として、共有財産の寄与度の割合を増やした事例があります。家事従事者の家計に対する寄与度が評価されているこのご時世からすると、全体を見て二分の一とすることが双方のバランスを欠くと評価される場合には、寄与度の評価も変わってくる可能性もあるかもしれません。


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