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「交通事故の刑事責任」・・・・・・・・・・・ 弁護士・市河真吾


 「先日、知人が自動車を運転中交通事故を起こして被害者に怪我をさせました。お酒を少し飲んでいたときいていますが、重い処罰を受けるのでしょうか」


 「最近のニュースでたびたび報道される飲酒運転による交通事故については、近時の刑法改正により、厳罰化がなされています。刑法第208条の2第1項前段は、「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は15年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処する」と定めています。実際の量刑は傷害の程度や本人の交通違反歴等前科前歴の有無などの事情に影響を受けると思いますが、単純な交通事故よりは悪質とみられ、重い処罰を受ける可能性があります。ちなみにいわゆるひき逃げをした場合は、道交法上の救護義務違反のほかに刑法上遺棄致死傷罪(刑法第219条)等の適用の可能性があります。



「スピード違反や信号無視での交通事故は、どうでしょうか」


「刑法第208条の2項後段は「その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させ、よって人を死傷させた」場合も傷害については15年以下の懲役、死亡については1年以上の有期懲役としています。道路状況等の客観的事情を考慮しなければなりませんが、制御困難な高速度と評価される場合、裁判例では、湾曲した下り坂の一般道において時速約150キロメートルでの事故について肯定するもの、一般道の左カーブを酒気帯び状態でかつ時速70キロメートルで走行した事故について否定するものがあります。
 信号無視の場合も刑法第208条の2後段は「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転し、よって人を死傷させた」場合も傷害については15年以下の懲役、死亡については1年以上の有期懲役としています。ただし、「殊更に無視し」とあるので、赤信号である場合を見逃した場合や未必的認識しかない場合は、本条にはあたりません。
 ちなみに他車の走行を妨害して事故を起こした場合も同様に重く処罰されます(刑法第208条第2項前段)



「単純な自動車の交通事故はどうなりますか」


「従来は、業務上過失致死傷罪(5年以下の懲役・禁錮・100万円以下の罰金)の適用でしたが、平成19年の刑法改正により自動車運転過失致死傷罪が新設され「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処する」と定められましたので(刑法第211条第2項前段)、こちらの適用になります。
 「自動車」には自動二輪車も含むと解されています。ちなみに傷害が軽い場合は、情状により刑の免除が可能とされます(刑法第211条第2項後段)。


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