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「中小受託取引適正法のおける委託事業者の義務と追加された禁止行為」・・・弁護士・水野賢一
「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払い遅延等の防止に関する法律」(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法・トリテキ法)が、令和8年1月1日に施行されました。これは、従前の下請代金遅延等防止法(下請法)を改正したものです。今回は、中小受託取引適正法における委託事業者の義務と追加された禁止行為について説明します。
委託事業者の義務
中小受託取引適正化法が定める委託事業者の義務は、@製造委託等代金の支払期日を定める義務(3条)A発注内容等を明示する義務(4条)B遅延利息の支払義務(6条)C取引に関する書類等を作成・保存する義務(7条)の4つです。
@製造委託等代金の支払期日を定める義務(3条)
委託事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、製造委託等代金の支払期日を定めなければなりません。製造委託等代金の支払期日を定めなかったときは、物品等を受領した日が支払期日となります。また、60日以上の支払期日が定められたときは、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が支払期日となります。
A発注内容等を明示する義務(4条)
製造委託等をした場合、委託事業者は中小受託事業者に対して、直ちに、委託等の内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法その他の事項)を書面又は電子メールなどの電磁的方法により明示しなければなりません。委託事業者が電磁的方法により発注内容等の明示をした場合に中小受託事業者から書面の交付を求められたときは、中小受託事業者の保護に支障が生ずることがない場合を除いて、遅滞なく、書面を交付しなければなりません。
B遅延利息の支払義務(6条)
委託事業者が支払期日までに製造委託等代金の支払をしなかった場合、物品等を受領した日から起算して60日を経過した日から支払をするまでの間、公正取引委員会規則で定める率(年14.6%)を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければなりません。また、中小受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに製造委託等代金の減額をした場合、減額日又は物品等を受領した日から起算して60日を経過した日のいずれか遅い日から減額分の支払をするまでの間、減額分に対する遅延利息を支払わなければなりません。この遅延利息の年率14.6%は、当事者の合意による変更はできないとされています。
C取引に関する書類等を作成・保存する義務(7条)
委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合、中小受託事業者の給付、給付の受領、製造委託等代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録を作成・保存しなければなりません。保存期間は2年とされています。
委託事業者の禁止行為(5条)
中小受託取引適正化法が定める委託事業者の禁止行為には、@受領拒否(1項1号)A製造委託等代金の支払遅延(1項2号)B製造委託等代金の減額(1項3号)C返品(1項4号)D買いたたき(1項5号)E購入・利用強制(1項6号)F報復措置(1項7号)G有償支給原材料等の対価の早期決済(2項1号)H不当な経済上の利益の提供要請(2項2号)I不当な給付内容の変更、やり直し(2項3号)J協議に応じない一方的な代金決定(2項4号)があります。このうち中小受託取引適正化法で追加された禁止行為は2つです。ひとつは、手形払等がA製造委託等代金の支払遅延とされたことです(1項2号括弧書き)。もうひとつは、J協議に応じない一方的な代金決定です。なお、振込手数料を中小受託事業者に負担させることは、B製造委託等代金の減額に該当します。
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