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「コーポレートガバナンスコードと会社法の改正」・・・弁護士・吉川 愛

 コーポレートガバナンスコードとは、2014年に安倍内閣が閣議決定した『日本再興戦略 改訂2014』の主要施策の一つとして、コーポレートガバナンスの強化が示されたことを受け、東京証券取引所と金融庁が共同して策定した原案をもとに東京証券取引所によって作られた、会社のガバナンス(統治)強化のためのガイドラインのことを言います。
 このコーポレートガバナンスコードは、法的な強制力などはなく、comply or explain (従うか、説明するか)という原則に基づいて制定されています。つまり、ひとつひとつのコーポレートガバナンスコードについて遵守しているか、遵守していないならばその理由を説明することの報告が求められています。東証一部、二部に上場している企業についてはすべての原則についての回答が義務付けられており、マザーズ及びJASDAQの上場企業については基本原則についての回答が義務付けられています。
 コーポレートガバナンスコードは以下の5つの原則から成り立っており、これに加えて補充の原則や基本原則に連なった原則が存在しています。
1 【株主の権利・平等性の確保】 上場会社は、株主の権利が実質的に確保されるよう適切な対応を行うとともに、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである。また、上場会社は、株主の実質的な平等性を確保すべきである。 少数株主や外国人株主については、株主の権利の実質的な確保、権利行使に係る環境や実質的な平等性の確保に課題や懸念が生じやすい面があることから、十分に配慮を行うべきである。
2 【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】 上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に努めるべきである。取締役会・経営陣は、これらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けてリーダーシップを発揮すべきである。
3 【適切な情報開示と透明性の確保】 上場会社は、会社の財政状態・経営成績等の財務情報や、経営戦略・経営課題、リスクやガバナンスに係る情報等の非財務情報について、法令に基づく開示を適切に行うとともに、法令に基づく開示以外の情報提供にも主体的に取り組むべきである。その際、取締役会は、開示・提供される情報が株主との間で建設的な 対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報(とりわけ非財務情報)が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである。
4 【取締役会等の責務】 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、(1) 企業戦略等の大きな方向性を示すこと(2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと(3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことをはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。
5 【株主との対話】上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。
 コーポレートガバナンスコードは時折改訂がなされており、直近では2021年6月に改訂がなされています。コーポレートガバナンスコードの改訂の背景事情などを踏まえて、2019年12月11日に会社法の一部を改正する法律が公布され、2021年3月1日に大部分が施行されています。報酬の決定過程の透明化を図るため、一定の会社における取締役の報酬について、報酬の決定方針を決定することを義務づけたり、取締役のインセンティブを付与するための株式報酬等に関する制度を整備したり、報酬に関する情報開示についての項目が事業報告書の記載事項に加えられたりしています。また、コーポレートガバナンスコードでは当初から求められている社外取締役の設置について、一定の会社に義務づける規定を設けたりもしています。

 


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