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「自動運転車のリスクについて(第1回 自動車運転に関する法的責任)」・・・弁護士・齋藤崇史

 昨今の、AIの技術革新とともに各種サービス、IoT技術などの向上により、実際に私達の生活にも大きな変化、影響が出始めております。
東京弁護士会においても、リーガルサービスジョイントセンターAI部会として、様々な法的課題への取り組みが始まっております。
 そこで、数回に分けて、自動運転車の仕組みと生じうる法的問題について、概説したいと思います。第1回の今回は、導入として、自動車運転に関する法的責任を再確認したいと思います
第1 自動車事故の種類
1 対人事故
対人事故には、歩行者(自転車利用者)、自動車利用者(自車、相手方車両)、さらに運転手、同乗者(バス、タクシー利用者)に対する事故態様があります。
2 対物事故
   対物事故には、車両(単独、複数)、工作物などに対する事故態様があります。
第2 自動車事故に伴う法的責任
1 民事責任
・民法709条による責任
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
・民法415条による責任
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
→債務者の責めに帰すべき事由(帰責事由)は、前段にも必要と解釈されており、帰責事由は「故意もしくは過失または信義則上これと同視すべき事由」と考えられている。
・自動車損害賠償保険法(自賠法)3条による責任
「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」
→「運行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いること。
→自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者等が「自動車の運行について事実上の支配力を有し、かつ、その運行による利益を享受していたもの」(最二判昭和44.9.18)であれば、運行供用者に該当する。→ただし、@自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、A被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びにB自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと、@ABすべてを証明したときは、この限りでない。(同3条ただし書き)
立証責任の転換がされており、事実上の無過失責任に近い状況である。
・製造物責任法(PL法)3条による責任
「製造業者等は、その製造、加工、輸入…した製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」(PL法3条本文)
→「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう(同2条1項)。プログラム・ソフトウェアは無体物であり、製造物に該当しない。
→「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう(同2条2項)。@製造上の欠陥、A設計上の欠陥およびB指示・警告上の欠陥に分けられる。
2 刑事責任
・自動車死傷行為処罰法による責任(過失運転致死傷)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。(同法5条)
・刑法による責任(業務上過失致死傷等)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。(同法211条)
→交通事故が自動車の欠陥等を原因として発生した場合、理論上適用可能性があるが、実際には、極めて特殊な事案に限定される。
以前に起きた事故から、設計製造に問題があることを認識できたにもかかわらず、リコール、注意喚起、点検回収が行われない場合は自動車の欠陥等の責任が問われる場合がある。

 次回は、自動運転の仕組みをご紹介予定です。御拝読の皆様には、事故責任、新規事業などのアイデアやリスク、リスクとの付き合い方を考えて頂ければと思います。


 


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