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「景品表示法における優良誤認・有利誤認表示」・・・弁護士・吉川 愛

 景品表示法は、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を規制している法律で、消費者庁がこれを監督しています。この法律の中に、優良誤認表示や有利誤認表示を禁止する規定があります。
 具体的には、テレビCMや新聞・雑誌広告などで、消費者に「これは良いものだ!」と思わせておいて、実際にはそうではないものであるような表示をすることを禁止しています。
 分かりやすいもので言えば、「ガンが治る」とか「飲むだけで痩せる」などという表現は優良誤認表示、ずっと同じ価格であるにもかかわらず「今だけ○○円!」という表示は有利誤認表示ということになります。
 上記のような表現は明らかに不当であるということは分かると思いますが、実際には非常に微妙な部分で優良誤認・有利誤認表示とされてしまうこともあります。例えば、置いておくだけで蚊を駆除できるという商品について、CMで蚊を除去できるということを宣伝していた場合を想定します。当該商品は研究によりある部屋の中で、一定の蚊を駆除することはできるという明確なデータがあったことから、CMで蚊を駆除できる!と戸外に当該製品を置いている画像と共に宣伝したとします。この場合、CMを見た消費者は「戸外に置いておけば、全ての蚊を駆除できる」と思うであろう、と消費者庁が判断すると、消費者庁は、戸外において、全ての蚊を駆除できるという根拠があるかないかを調査します。製品を作成したメーカーは、ある研究室において、一定の蚊を駆除できる、という実験データしか持っていませんので、戸外において全ての種類の蚊を除去できるというデータは持っていません。そうなると、根拠がないCMをした、ということで、当該CMは優良誤認表示として規制の対象となってしまう、ということになります。なお、この一般消費者がどう思うか、の判断は消費者庁が行うものですので、特に明確な基準があるものではありません。
 このように、消費者庁は日々行われているテレビや雑誌その他の広告について、不当な表現がないかをチェックし、規制を行っています。以下、当該規制について説明します。
 景品表示法における不当表示は優良誤認表示(商品又は役務の品質・規格その他の内容についての不当表示)及び有利誤認表示(商品又は役務の価格その他の取引条件についての不当表示)等があります。いずれも、実際のものよりも著しく優良(有利)と一般消費者に対して示す表示および内容(取引条件)について競争事業者に係るものよりも著しく優良(有利)であると一般消費者に誤認される表示を禁止しています(法5条1号・2号)。ここからは優良誤認をメインに説明をしていきます。
 「著しく」は、誇張・誇大の程度が社会一般に許容されている程度を越えていることを指しているものであり、誇張・誇大が社会一般に許容されるものであるかどうかは当該表示を誤認して顧客が誘引されるかどうかで判断され、その誤認がなければ顧客が誘引されることが通常ないであろうと認められる程度に達する誇大表示であれば「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示にあたるとされています(東京高等裁判所判決平成14年6月7日)。
 消費者庁は、上記表示にあたる恐れがある表現を発見した場合には、調査をすることとなります。この調査については、メーカー側には非常に厳しいと考えられる規定が存在しています。消費者庁は当該表示が優良と示す表示に該当するか否か判断する必要がある場合に期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、事業者が求められた資料を提出しないときは、当該表示は不当表示と看做されます(法7条2項)。そして、その求められる根拠は表示後に出来上がったデータでは不可であり、当該表示をした時に存在していた資料でなければなりません。一定期間内に根拠を立証できなかった場合には、全て不当表示と看做されます。不当表示と認定された表現をした事業主に対しては、違反行為の差止めや再発を防止するために必要な時効・関連する公示(新聞などに掲載されているものが多いです)等を命じる措置命令が出されます。
 また、これらの制度をさらに実効化させるため、平成26年11月27日、景品表示法の一部が改正され、課徴金制度が設立されました。この課徴金制度は平成28年4月1日から施行されています。

 


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