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特    集

「家事事件手続法」・・・弁護士 吉川 愛

 相続、離婚、親権者、養育費、などに関わる事件は通常「家事事件」と呼ばれます。この家事事件に関する
手続法が改正され、平成25年1月に施行されました。手続法という性質上、本来一般の方々の生活には直接には影響するものではありませんが、日常生活の中でも想像のつきやすい家事事件ですので、一般の方々が万が一巻き込まれた場合に、影響が大きそうな部分について集中して説明したいと思います。

1 管轄
  婚姻費用分担、養育費、親権者の変更などの審判の申立については、従前相手方の住所地において申立て  なければならなかったところ、改正により申立人又は相手方の住所地において申立てることが可能になりました。  また、当事者双方の合意により管轄が定められることとなりました。離婚や別居により遠隔地に居住している当  事者においては、遠隔地だからといって権利の保全を断念しなくてもすむ可能性が出てきました。

2 電話会議
  家事調停や家事審判において、裁判所が相当と認める場合には、電話会議による参加が可能となりました。現実的に全国の裁判所において設備が整えば、遠隔地からの毎回の出廷の負担を省略できる可能性があり、交通費や、出廷のための時間が取れないことで権利の保全を断念しなくてもすむ可能性が出てきました。

3 申立書
  家事事件の申立てにおいては、原則として申立書の写しを相手方に送付することとなりました。従前は、申立書を相手方に開示することは行わず、相手方には期日の連絡と事件名、事件番号が担当の家事部から書面で送られてくるのみであったため、相手方は申立人が何を希望して申立てているのか想像することすら難しい事態である場合もありましたが、今回の改正により、相手方は少なくともどういった内容の申立がなされているのかが、原則として予測が付けられ、第一回の期日に臨めるようになりました。

4 審理の終結日や審判日の定め
  家事審判において、審理が終結する際には、裁判所は審理が終結日を定めなければならないこととなりました。審判の場合、いつ審判が出るかが裁判所に委ねられており、当事者としてはいつ出されるのか不安な時期がありましたが、明確に指定されることとなり、手続の安定がはかられました。

5 子どもの手続関与
  従来、未成年などは訴訟行為能力がなく、訴訟行為をする場合には法定代理人(子どもであれば両親など)によらなければ家事事件における手続行為はできませんでした。改正により、一定の手続には、未成年でも意思能力があれば法定代理人によらずに手続が行えることとなりました。家事事件における父親、母親が対立関係にある場合に、子どもにとっても双方に利害対立が考えられるような状態が万が一想定される場合などがあったりします。このような場合などに裁判所は申立てにより、または必要と認める場合には職権で子どもにも手続に関与させ、場合により子どもに独自の手続代理人を選任させることができるようになるものとなり、子どもたちの意思が手続に反映しやすくなることが予想されます。

6 子どもの意思の確認
  家事事件において、において、未成年である子がその結果により影響を受ける家事審判の手続及び調停においては、家庭裁判所はこの意思を把握するように努め、子の年齢及び発達の程度に応じてその意思を考慮しなければならないという規定が設けられました。

  これにより、例えば子の引き渡しや面会交流、監護権者の指定などの調停、審判について、家庭裁判所はその手続内において子どもの意思の把握をすることが義務づけられました。そして、この子どもの意思を把握するために、必要がある場合には、前述の通り、法定代理人ではなく、子どもの手続代理人を申立により、または職権で選任することができるようになりました。さらに、子どもの手続代理人は一般の離婚調停においても子どもが利害関係参加する場合に選任され得ることとなりました。

  離婚事件や、子どもの監護権者の指定や面会交流、子の引き渡しなどの事件は、法定代理人である両親が別居しており、子どもがどちらかと一緒に生活をしていることから、子どもが十分自由に意思を表示できない場合や、一方当事者が、裁判所の子どもへの意思の確認の方法を十分だと思わない場合が想定されていました。このような中、このような子どもの積極的な手続の関与と、手続代理人の制度は、紛争の解決に向けて大きく貢献してくれる可能性があり、積極的な運用が期待されます。

 


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