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特    集

「業務委託契約書」・・・弁護士 梶 智史

1 日々の業務の中で,契約書を作成する機会は少なくないでしょう。そこで,今回は,業務請負契約を例に,契
 約締結時にチェックすべきポイントをいくつか指摘したいと思います。

2 事例
  A社は,B国に食品加工工場を建設することになった。しかし,A社はB国に関して何の知識も持っていなかっ
 た。
  そこで,B国に進出する企業をコンサルティングする会社であるC社に依頼し,B国進出のためのコンサルティ
 ングを行ってもらうことにした。
  A社とC社との交渉の結果,C社はA社のために,@B国において,食品加工工場を建設する,AB国で労働者
 を募集するために工場周辺の労働力人口を調査するという業務を依頼することになった。
  C社は,上記の業務を行う事を内容とした契約書を作成し,A社に交付したが,A社は当該契約書についてど
 の点を確認すべきだろうか。

3 業務委託契約とは?
  そもそも,業務委託契約とは,民法に規定された典型契約ではありません。ゆえに,業務委託契約を締結した
 場合に,A社がいかなる権利を得,義務を負うかを判断するには,業務請負契約の内容から,当該契約が,民
 法上のいかなる契約に当てはまるのかを検討する必要があります。
  検討すべき条文は,ァ.請負(民法632条〜642条),イ.準委任(民法656条,643〜655条)です。
  ア.請負とは,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,もう一方がその仕事の結果に対してその報酬
 を支払うことを約する契約です。イ.準委任とは,法律行為ではない事務を委託する契約です。両者の違いは,
 ア.請負は,仕事の完成が約束されるのに対し,イ.準委任は,仕事の完成までを約束するものではなく,善良な
 る管理者の注意義務をもって委託された業務を処理することが要求されるに留まるというものです。

4 事例の場合は?
  今回A社は,C社との間で,上記@〜Aの業務を依頼することにしました。では,@〜Aの業務は,ア.請負に
 あたるのでしょうか?それとも,イ.準委任でしょうか?

  @の業務は,B国において,B社の食品加工工場を建設するというものです。つまり,契約の内容として,C社
 はA社のために食品加工工場を建設し,これを完成させることまでの義務を負うことになります。そこで,@の業
 務は,請負契約に該当すると判断できます。
  請負契約に該当する場合,A社にとって重要なのは,C社がA社の希望通りの工場を建設するかどうかという
 ことですので,契約書の内,C社が建設すべき食品加工工場の場所,仕様,完成時期について確認することに
 なります。

  Aの業務は,B国で労働者を募集するために工場周辺の労働力人口を調査するというものです。つまり,工場
 周辺の労働力人口について,委任の本旨に従って,善良な管理者の注意をもって調査し,報告すれば,一般的
 には契約上の義務は終了することになります。
  準委契約に該当する場合,A社にとって重要なのは,C社がA社が調査依頼する目的・趣旨に従った調査をす
 るかどうかです。そこで,A社が調査を依頼する目的から考えて,契約書の内,C社が調査すべき範囲・質など
 について記載された部分を中心に検討することになります。
  例えば,A社は,A社工場が完成後の労働者の確保に非常に強い関心を持っていたとします。この場合,A社
 としては,契約書に記載すべき業務の内容としては,「A社工場の周辺における労働力人口の調査。」との記載
 では十分ではなく,A社工場までの通勤時間が1時間以内である20代から30代の男性で,A社で働く可能性が
 ある労働者がどの程度含まれているのかを調査する,などとして条件を明確にすべきでしょう。
  また,Aの業務が準委任に該当する場合,民法上,受託者であるC社は,委託された業務を処理するに必要
 な費用と利息の償還を請求することができます(民法650条)。この点について,一般的には,契約書におい
 て,C社がAの調査をするにあたって必要となった費用について,A社に対し,どのような方法で請求するのか,
 支払い方法はどうするのかなどを明記することになります。

5 以上のように,契約書の中には,性質の異なる契約が複数混在していることがしばしばあります。
  そのような場合には,自社がいかなる効果の発生を望んでいるのかを明確にし,その効果の発生が確実に担
 保できるか否かという観点から契約書の条文をチェックすべきです。
  それゆえ,弁護士に契約書のチェックを依頼する場合にも,どのような趣旨・目的でその契約書を作成したの
 か,という点を伝えておくと,実効的な契約書のチェックが可能になります。

 


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