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特    集

「原子力の損害の賠償に関する法律等」・・・弁護士 吉川 愛

 1 原子力の損害の賠償に関する法律(原賠法)
   2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震により、福島県の太平洋沖に存在する、東京電力の原子力発電所が大事故となりました。これにより、今でもなお想定が不能な程度の損害を、多数の方々が被った状況となりました。この損害の賠償については、原賠法が昭和36年から存在しています。この法律では、原子炉の運転等により生じた原子力損害は、原子力事業者が基本的には無過失で賠償責任を負うこと、賠償責任が賠償措置の額を超える場合の政府の援助規定などが置かれています。

   原賠法では、原子力事業者に対して、無過失の責任を負わせていると同時に、賠償措置額(最大1200億円)を超える原子力損害が発生し、原子力事業者が自らの財力では全額を賠償できない等の事態が生じた場合には、国が原子力事業者に必要な援助を行い、被害者救済に遺漏がないように措置することを定めています。

   今回の原子力発電所の事故では、賠償措置額を大きく超えることは明らかであり、これに対する国の必要な援助の方法を定めるために、次に説明する原子力損害賠償機構法と、平成23年原子力被害に係る緊急措置に関する法律が、平成23年7月及び8月に施行されています。

2 原子力損害賠償機構法
  この法律によって作られる機構は、原子力事業者が相互に支援するため、相互に資金を出し合って作られる機構であり、原賠法に定められた賠償措置額を上回る大規模な原子力損害が生じた場合に、原子力事業者に対して必要な援助を行い、原子力事業者による賠償措置が円滑に実施されると共に、電気の安定供給その他の原子 炉の運転等に係る事業の円滑な運営を確保し、国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展を目指すことと目的とします。

  この法律において、国は、原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を国が負い、機構が目的を達成することができるよう、万全の措置を取る責務を負うこととされています。

  具体的には、大枠は原子力事業者が相互に毎事業年度毎に負担金を出し合い、来るべき原子力損害に備えます。原子力損害に係る損害賠償の迅速かつ適切な実施や、電気の安定供給の確保のために資金調達が必要な 場合には、原子力事業者は機構に対して必要な資金援助を求めることができます。そして、資金援助の要請があった時に、機構に十分な資金を有していない場合には、機構は、特別事業計画を作成した上で、政府の支援を活 用し、申し込みを行った原子力事業者に対して資金援助を行うことが可能になります。

  こうすることにより、被害を受けた人に対する賠償を迅速かつ円滑に行い、また原子力事業者が倒産をすることなく、また被害賠償を全て国民の税金により行うということなく原子力事業者の今後の自助努力により行うことができるという構造ができていることとなります。

3 平成23年原子力被害に係る緊急措置に関する法律
  この法律は、本来原子力事業者が支払うこととなっている、被害者の損害につき、原子力事業者に代わって一時的に仮払いを行うことを認める内容が含まれる法律です。現実的に資金が枯渇している被害者の救済を考え、国が立替払い又は仮払いを行うこととしているのです。

  この法律に基づき、既に請求を行っている方はたくさんいらっしゃることは既にご存じのことと思います。これは、国が支払っているのではなく、あくまで原子力事業者の損害を仮払い、又は立替払いしているという状況であるのですが、今後どのようにこれが扱われることになるのかについては、はっきりはしていないようです。

4 国の責任との関係について
  今まで述べてお分かりの通り、今回の原子力事故は、原賠法に基づき、基本的には原子力事業者が責任を追うことになっています。国は、原賠法によればその賠償が適切かつ円滑に行われ、電力供給事業が円滑に運営されるよう、援助をする責任を負いますが、具体的な賠償責任を負っている訳ではありません。

  とはいえ、国自身が不法行為責任(国家賠償責任)を負うかどうかについては、今は明確にはなっていません。 今後の動きに注目すべき所ですが、いずれにせよ、今回の大地震及び原子力事故によって損害が生じ、一刻も早い救済を求めている方々にとって、被害回復が適切かつ迅速に行われる方法、制度が充実することが望まれます。

 


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