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特    集

                        「事業承継円滑化法」について・・・弁護士 松村博文

 中小企業のオーナーが事業を円滑に承継させる上で、従来、次の三点の問題が指摘されていました。

@ 経営者の個人資産の大半が事業用に投入されているため、相続人である承継者に資産を集中するのに他の相続人の遺留分の請求があると集中できない。

A 承継にあたっては、後継者が自社株式等を集中して承継しなければならないが、その資金調達や相続税の支払資金の調達が困難

B 業績のいい会社であればあるほど、相続税の負担が加重となる点

  このような問題点を解決し、中小企業の経営の承継を円滑にするために経営承継円滑化法が成立しました。
 その内容は、先の問題点に対応するように

T 遺留分に関する民法の特例を設けました。
  すなわち、後継者を含む推定相続人全員の合意により、先代経営者から後継者に贈与された自社株や事業用資産に
 ついて、遺留分減殺の対象から除外することができるようになりました。

  これにより、無駄な相続の争いを避けられ、承継者に自社株や資産を集中できることになります。
  その手続ですが、対象となるのが「特例中小企業者」というものです。
  まず、三年以上継続して事業をおこなっている会社である必要があります。

  そして、特例中小企業者は、業種ごとに資本金の額や従業員の数の要件が異なります。
  ・製造業・建設業・運輸業その他→資本金三億円以下又は従業員三百人以下
  ・卸売業→一億円以下又は百人以下
  ・小売業→五千万円以下又は五十人以下
  ・サービス業→五千万以下又は百人以下
  ・ゴム製品製造業→三億円以下又は九百人以下
  ・ソフトウェア業又は情報処理サービス業→三億円以下又は三百人以下
  ・旅館業五千万円以下又は二百人以下
  です。

  手続は、推定相続人全員で当該株式を相続の基礎財産から除外する合意を書面で作成し、全員が署名し、または実
 印による記名押印が必要となります。
  この株式の除外合意の際、併せて、株式以外の財産の除外合意をすることもできます。
  除外合意ができない場合でも、遺留分の算定の基礎財産に算入する株式の価格を当該合意をした時の価額に固定
 するとの固定合意をすることもできます。
  固定合意の際の株式の価額は、合意した時における相当な価額として、弁護士、公認会計士、税理士等が証明した
 ものであることが必要です。ただ、この固定合意については、株価は流動的ですので、価額によっては、後継者に不利
 に働く場合もあるので、注意が必要です。

 以上の除外合意や固定合意ができたなら、承継者は合意から一ヶ月以内に経済産業大臣に確認の申請を行い、その確認を受けて、その後一ヶ月以内に家庭裁判所に許可の申立をし、その許可を受ける必要があります。この家庭裁判所の許可を受けて初めて遺留分の特例としての効果が認められます。

U 資金調達の困難性の問題については、
  
中小企業信用保険法、株式会社日本政策金融公庫法等の特例を定め、事業承継の際に受けられる融資の枠を拡大
 し、また、その融資の対象を、事業者だけではなく、中小企業の経営者個人にまで広げております。

V 相続税の課税についての措置が設けられました。
  具体的には、経済産業大臣の認定を受けた非上場中小企業の株式等を、相続または遺贈により取得した後継者につ
 いて、当該株式の80%に対応する相続税の納税を猶予すると内容のものです。

当事務所ともどもこの承継法を上手に活用していただき、経営の円滑な承継が実現されればと思っております。


                                                            


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