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「裁判員制度」・・・・・・・・・・弁護士・市河真吾

  平成21年5月から、刑事裁判で裁判員制度が導入されます。司法改革の一つとして新聞、テレビ等でも報道されていますが、具体的なことはあまりご存知ない人が多いかもしれません。しかし、現実にスタートすれば、日々の生活に関わってきますので、今回は制度の概要をわかりやすく紹介したいと思います。

1 沿革
  諸外国には国民参加の裁判制度があります。
  たとえば、アメリカでは、陪審制度があります。国民から選ばれた陪審員の評議により事実認定がなされ、この決定に
 裁判官は拘束されます。刑事事件でいえば、「被告人が被害者をナイフで殺意をもって刺し殺した」事実があるかどう
 か、つまり有罪無罪に直結する事実の有無を陪審員が判断します。映画やドラマでも、陪審員が登場するシーンがある
 ので、具体的イメージはしやすいと思います(たとえば「12人の怒れる男」「評決」など)。注意すべきは、陪審員は事実
 認定のみ行い、刑罰を具体的に決める量刑や法律判断は行わないという点です。
  他方、ドイツなどで導入されている参審制度は、国民から選ばれた参審員は、裁判官と共同して事実認定、量刑、法
 律問題を合議により判断する制度です。
  日本における裁判員制度は、国民から選ばれた裁判員が、裁判官と共同で事実認定と量刑を行う点で参審員に似て
 いる制度といえます。
  ところで、日本では、戦前、陪審法が施行され、昭和4年から昭和18年まで刑事事件で陪審制度が行われました。
 当時の陪審は、陪審員が納税者である男子に限られ、陪審の更新も認められる(陪審員の答申は裁判官を拘束しない)
 などの偏頗な制度でしたが、陪審事件数484件のうち17%が無罪となるなど一定の成果もありました。しかし、あまり
 利用されず、戦時立法により昭和18年に停止されました。

2 手続きの概要
  (1) 裁判員の選任
    裁判員の選任は裁判所が作成する裁判員名簿に基づき選任されます。裁判員名簿は、選挙権のある国民か
   ら抽選で選び裁判員候補として作成されるので、特別の理由がない限り、20歳以上の国民一般が対象になるとい
   ってよいでしょう。
    具体的に裁判員は名簿に基づき、事件ごとに抽選で選ばれます。ただし、裁判員の候補者が事件関係者など利
   害関係がある場合は(証人、被害者の親族、被告人の親族など)、裁判の公平をはかるため、裁判員から除外され
   ます。この除外事由があるかどうか判断するため、名簿上の裁判員候補者は、裁判所で質問を受けることになりま
   す。裁判員は一つの事件で6名選任されることが原則です。
    なお、年齢70歳以上の国民、学生、重い病気等やむを得ない事由がある場合は、裁判員を辞退することができま
   す。

  (2) 公判の立ち会い・評議
    裁判員に選任されと、裁判員は刑事事件の裁判(公判といいます)に立ち会うことになります。裁判員が担当する
   事件は、事前に整理手続きにより、争点が明白化され、集中審理により、公判を短期間で終わらすことを予定してい
   ます。
    手続き的には、現在でも行われている起訴状朗読、冒頭陳述、証拠調べ(証人尋問、被告人質問含む)、論告求
   刑、弁論等が行われます。裁判員は、検察官が立証すべき公訴事実等の有無について、証拠、証人の証言、被告
   人の発言を吟味して判断します。具体的な事実認定及び量刑の判断は裁判官と一緒に行う評議で決定します。
    評議は裁判員6名、裁判官3名で行います。
    全員一致で結論が決まらなければ、多数決で決定します。なお、多数決で決定する場合は、裁判員、裁判官の一
   人以上の賛成が必要とされています。評議の決定(評決)に基づき、裁判官は判決を宣告します。
    裁判員制度の対象となる事件は、殺人罪、強盗致死傷、傷害致死、危険運転致死傷などあります。罪が重く慎重
   な判断が求められる事件です。

3 展望
  裁判員に選任されると、公判の立ち会いのため仕事を休まなければいけなかったり、守秘義務や出頭義務を負わされ
 たり、死刑や懲役刑といった判断を下すことが責任が重いなど、裁判員に選任される国民の負担は決して軽いものでは
 ありません。また、およそ1年間で320人から620人が裁判員候補者となるといわれています。
  しかし、国民参加によって、国民の意識、常識というものを反映して司法の公平、信頼を確保することは、現在の刑事
 裁判の問題性(捜査機関作成の書面の依存、起訴=有罪の事実上の前提から生じるえん罪など)を解決していくための
 大きな一歩だと思います。裁判員制度は、集中審理、書面から証人重視の公判、少数の裁判官だけでない証拠吟味
 の客観性を高めるなど真の適正かつ公平な裁判が行われる可能性を秘めています。
  もちろん、制度を支えるのは人であり、裁判員制度を支えるのは国民一人一人です。裁判員制度による仕事や生活へ
 の負担は最小限度につとめなければなりませんが、制度の帰趨は、国民の社会への関心とその責任感にあります。そ
 の意味で裁判員制度が定着し発展するかどうかは制度の負担軽減とともに国民の意識そのものに依存するといえるで
 しょう。


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