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会社法−既存の有限会社の行方について−・・・・・・・・・・弁護士・吉川 愛

 今年の5月1日より会社法が施行されました。新聞等で,有限会社がなくなるという記事を見たことはありませんか?有限会社の根拠法である有限会社法は,会社法の施行と同時に廃止されることとなります。従って,今後新たに有限会社を設立することはできなくなります。それでは,今まで存在していた旧有限会社はどうなるのでしょうか。今回は,@会社法の施行によって,旧有限会社がどうなるのか,A何かすべきことはあるのかについて解説します。

1 会社法施行前に設立された旧有限会社の扱い
 (1) 結論から言うと,旧有限会社は,会社法上の株式会社として存続します。従って,「社員」は「株主」となり,「出資
   口」も「株式」となります。これらは概念としては同じであり,登記簿謄本上も,原則として職権で登記変更されること
   となります。しかし,株式会社と有限会社では,様々な点で違いがあります。この差異を解消するため,法律で有限
   会社法の廃止に伴う特例が設けられています。この特例によって,旧有限会社は何もしなくとも,基本的には今まで
   の運用を続けることができ,特別不利益を被ることはありません。
    例えば,株式会社と有限会社の特徴的な違いとして,取締役の任期(有限会社には任期はありません)や,決算
   の広告義務(有限会社に広告義務はありません)が挙げられますが,これらは,法律により,旧有限会社には適用
   除外することとなっています。このように,従前の有限会社法と同様の運用をすることが可能です。

 (2) 株式会社と有限会社の大きな違いとして,商号があります。旧有限会社は,会社法施行後も,株式会社に商号を
   変更する必要はなく,「有限会社」の文字をそのままその商号中に使用することができます。この「有限会社」の商号
   は,会社閉鎖又は組織変更をしない限り,半永久的に存続していくこととなります。

 (3) 以上のように,旧有限会社は特に何もしなければ,特別不利益を被ることはありませんが,次項で述べるように,
   検討すべき事はあります。

2 旧有限会社が検討すべき事項
 (1) 商号をどうするか
    先述のとおり,「有限会社」の商号はそのまま使用することができ,この場合には特例有限会社として,今までと同
   様の運用ができます。しかし,特例有限会社とはいえ,会社法上の株式会社であることから,「株式会社」に商号を
   変更することもできます。しかし,商号を株式会社にする場合,特例の適用はなく,株式会社の規制が全面的に適用
   されることとなります。株式会社になるからといって,商号を「株式会社」に変更するかどうかは,重大な法律効果が
   発生することになるので,慎重な検討が必要です。

 (2) 定款について
    特例有限会社において,定款記載事項は株式会社に適応する形で定款変更又は定款の記載がなされたものとみ
   なされたりすることになります。しかし,実際にある定款には,その内容が反映されていませんので,その内容を反
   映させておく必要があります。この手続は,定款変更手続を要せず,単なる書換えで問題ありません。例えば「社
   員」→「株主」,「出資口」→「株式」,「社員総会」→「株主総会」,「営業年度」→「事業年度」,「資本の総額」→削
   除,等があります。その他,有限会社特有の定款記載事項等が,特例有限会社でどのような扱いを受けるかについ
   ては,専門家に相談することをお勧めします。

 (3) 計算関係について
    特例有限会社である限り,特に考慮すべき点は原則としてありませんが,旧有限会社から株式会社に組織変更す
   る際,従前では,変更時に資本の総額を減少したり,資産の評価替えを行うことが出来ていましたが,会社法ではこ
   のような不透明な会計処理をすることができなくなりました。

 (4) 申請が必要な場合について
    原則的には,従前と同様の運用をする限り,登記申請をする必要はなく,職権によって登記がなされます。しかし,
   旧有限会社において,議決権,利益配当基準,残余財産の分配基準について,特別の定めをしていた場合や,株
   式の全部の内容が,社員が旧有限会社に対して利益を持ってする持分の消却ができるものになっていたり,一定の
   事由が生じたことを条件として利益をもってする持分の消却できるものになっている場合には,会社法施行後に、原
   則として6ヶ月以内に変更の登記申請をしなければならないことに注意を要します。


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