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特    集

労働審判制度・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・弁護士・松村博文

1 労働審判制度とは
  労働審判制度とは、個別の労働関係の紛争について、裁判官と労働関係に関する専門的な知識経験を有する者が、事件を審理し、調停による解決の見込みがあるときには、これを試み、その解決に至らない場合には、労働審判を行い、あわせて、これと訴訟手続とを連携させることにより、紛争の実情に即した迅速、適正かつ実効的な解決を図ることを目的とする制度です。個別労働関係の紛争は、年間100万件あるといわれていますが、現実に裁判持ち込まれるのは、年間3000件程度です。これまで、時間と、費用がかかりすぎたのを是正でき、実効力ある制度といえます。紛争の種類は、個別労働紛争ですが、公務員法が適用される人は除かれ、また、組合間差別や、均等等の複雑なものは、迅速かつ適切な処理になじまないので、対象から除かれるでしょう。具体的には、解雇や雇い止め、労働条件の切り下げ、配置転換、出向などの紛争に有用でしょう。労働審判制度は、当事者となっている事業主、労働者いずれからでも申し立てできますが、実際上は、労働者側から申し立てられることが多いと思われます。

2 労働審判手続の主体
  労働審判手続の主体は、裁判官である労働審判官1名、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で組織する労働審判委員会で行います。決議は過半数(2名)で決せられます。労働審判員は、全国で1000人を予定しており、このうち、労働側の審判員が500人の予定です。

3 手続の進行
地方裁判所本庁に設置されます。相手方の営業所、事務所がある地方裁判所や、労働者が働いている事業者がある地方裁判所で申立ができます。当事者から労働審判手続の申立があった場合には、相手方の意向にかかわらず、手続を進行させ、原則として、調停により解決しまたは、労働審判を行うものとされます。この点は、労働局等での「あっせん」などの手続が、相手方が出頭しないと手続が進められなかった問題を解決する意味をもっています。また、出頭しない場合には、5万円以下の罰金を科すことができます。なお、手続は非公開でおこなわれます。

4 迅速な審理
  特別な事情がある場合を除き、三回以内の期日で審理を行います。

5 労働審判
  労働審判委員会は、当事者間の権利関係および労働審判手続の経過を踏まえて労働審判を行います。 労働審判に不服のある当事者は、二週間以内に異議の申立をすることができ、その場合には、労働審判は、効力を失います。 異議の申立がないときには、労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有します。 労働審判委員会は、事案の性質上、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のため適当でないと認めるときは、労働審判を行うことなく労働審判事件を終了させることができます。

6 訴訟手続との連携
  労働審判に対して、異議の申立があった場合には、労働審判手続の申立にかかる請求については、労働審判手続の申立の時に、労働審判がなされた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。異議申立と同時に、労働審判で使用された証拠が裁判に引き継がれることになります。

7 施行
  平成18年4月1日から施行されます。

8 総括
  労働審判制度は、ともすれば、長引きがちな労使間の個別紛争を早期に適正に解決する制度であり、紛争の当事者が弁護士と相談するなどして、適正にこの制度を利用できるように今後の活用が期待される制度です。

    


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