■ Web版SUM UP


特    集

『これであなたも発明家』 ・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ 弁護士・藤川綱之

1 工業所有権って何?
  皆さんは、工業所有権という言葉を聞いたことがあるでしょうか。簡単に言ってしまえば、人の発明や発想を保護する権利のことです。そして、工業所有権の中には、発明を保護する「特許権」、ちょっとしたアイデア(考案)を保護する「実用新案権」、デザインを保護する「意匠権」、ブランドやマークを保護する「商標権」の4種類が含まれています。聞き慣れない言葉が並んでいるかも知れませんが、生活の至る所で工業所有権は登場してきます。
  例えば、皆さんが着ているシャツ、洗っても崩れない形態安定機能等は特許権、財布や定期が入れられるように工夫されたポケット等は実用新案権、独特の形状や模様等は意匠権、メーカーのロゴ等は商標権によって保護されているかも知れないのです。少しは身近に感じることができたでしょうか。

2 特許って何
  本日は、紙面の都合上、工業所有権の中から、特許権を取り上げてみたいと思います。
  特許と聞いて、「自分には関係のない世界だ。」等と思われた方も多いかと思います。ところが、普通の主婦やサラリーマンでも、ちょっとしたアイデアを活かして特許権を取得し、一攫千金を成し遂げた人は沢山いるのです。かかと部分をなくすことでダイエットに役立つという「初恋ダイエットスリッパ」、大きさを自由自在に変えることで色々なサイズの鍋に使える「フリーサイズ落としぶた」、刃を切れ目にしたがって折ることで何度も新品同様の切れ味で使える「折る刃式カッター」、今やほとんどの洗濯機で見かけるようになった「糸くず取りネット」等は、普通の主婦やサラリーマンによる発明です。つまり、誰でもアイデア一つで発明家になれるチャンスはあるのです。

  この点、発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条)と定義されていますが、どんな発明でも特許権を取得できるわけではありません。特許法は、特許を得るための条件として、1.産業上の利用可能性(同法29条1項柱書)、2.新規性(同条1項)・進歩性(同条2項)、3.先願であること(同法39条)、4.特許を受けることができない発明でないこと(同法32条)、以上を定めています。例えば、画期的な治療方法を発明したとしても、「産業」の分野には属さないことから1.の要件が欠け、特許の対象とはならないのです。「自分の発明はどうだろう?」と悩まれてるあなたは、特許の専門家である弁理士や発明支援団体に相談してみましょう。

3 特許はどうすれば取得できるの?
  いいアイデアがひらめいたあなたは、是非とも特許権を取得することをお薦めします。
   あなたの発明は、特許庁に出願し、審査をクリアし、登録料等を納付することで、「特許権」という名前の財産となり、特許法によって保護されることになります。なお、取得した特許権の保護期間は、出願日から20年間です。もっとも、特許権は、出願から取得まで、早くて2年半、下手をすると5年以上かかることもあり、手続の期間短縮は、今後の大きな課題といえます。また、特許権を取得するためには、出願手数料2万1000円、審査請求料8万6300円、特許料(1〜3年目は年額1万4100円、4〜6年目は年額2万1900円、7〜9年目は年額4万3800円、10年目以降は年額8万7600円)等の費用がかかります。さらに、特許の出願を弁理士等に依頼すれば、弁理士費用も必要となってきます。

  これらの手続負担や費用負担にも関わらず、特許の出願件数は、年々増え続け、現在では年間40万件を超えています。特許の重要性が認知されてきた証拠でしょう。

4 特許を取得すればどんないいことがあるの?
  めでたく特許権を取得できたあなたには、どのようないいことあるのでしょうか。
  まず、あなたの発明を他人が勝手に真似することはできなくなり、20年間は市場を独占することができるようになります。そして、真似をした相手に対しては、使用差止や損害賠償を請求できたりするのです。なお、東京地方裁判所は、平成10年10月、特許権侵害を理由とする損害賠償として、過去最高額の金30億5936万円の支払を命じる判決を出しています。

  また、あなたの発明が企業の目に留まれば、製品化され、一儲けできるチャンスです。そして、企業との間で、多くの場合、商品化実施契約を締結し、契約金とロイヤルティについて取り決めをすることになります。この点、契約金とは契約締結の際に支払われる一時金、ロイヤルティとは商品が一個売れるごとに何円という形で支払われるお金です。つまり、商品がヒットし、沢山売れるほど、多くのロイヤルティが手にはいることになります。なお、先程の「糸くず取りネット」を発明した主婦は、ロイヤルティとして3億5000万円もの大金を稼ぎ出しているのです。

  特許は、現代日本のような高度情報化社会において、今後もその地位を高めていくものと思われます。いいアイデアをお持ちのあなたは、是非とも特許権を取得し、一攫千金にチャレンジしてみて下さい。


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